修了生の声 佐藤 網夫さん/統合幕僚学校長 空将

研鑽の習慣、人との縁は生涯の大きな財産。将来を担うリーダーに学びを伝えたい

統合幕僚学校長
空将
佐藤 網夫さん

佐藤網夫さん
今回お話を伺うのは、2020年9月修了の佐藤網夫さんです。佐藤さんは自衛隊入隊後、幅広いキャリアを経験しながら2024年12月20日に統合幕僚学校長に就任されました。今までのご経歴、本学での学びで得たものについて語ってくださいました。


自立したい一心で航空自衛隊に入隊

――これまでのキャリアについてお聞かせいただけますか?
佐藤さん:「早く自立したい」という気持ちと規則正しい生活への憧れから、15歳の時に、航空自衛隊の生徒隊に入隊しました。その後、防衛大学校に進学。電気工学を専攻し、武道の一つである銃剣道部に入り、夢中になって練習に励みました。

幹部に任官した後は、北海道、岩手県、青森県、奈良県などを転々とし、部隊指揮官のほか、幕僚として人事、教育、情報通信など幅広い分野のポストを経験しました。戦略やビジョンの策定、サイバーセキュリティ、DXに係る業務にも携わりました。

また、令和5年度には、私が基地司令を務めていた入間基地において自衛隊の最高指揮官である総理大臣をお迎えして航空観閲式を実施しましたが、その際、観閲部隊の部隊指揮官を務めました。 現在は、主に上級幹部に対し、陸海空自衛隊の一体的運用(統合運用)に必要な見識を修得させる統合幕僚学校の学校長を務めています。

部隊指揮官をつとめた佐藤網夫さん


――現在はどんなお仕事をしていますか?
佐藤さん:私が学校長を務める統合幕僚学校は、 上級指揮官・幕僚に対する防衛戦略や統合運用に関する教育、国際平和協力活動等に派遣される派遣部隊の指揮官・幕僚に対する教育、統合運用に関する基礎的な調査研究を主任務としています。学校長である私は、教育の方向性を定め、学校組織の運営全般を統括しています。


佐藤網夫さん部隊巡閲


――やりがいを感じる時はどんな時ですか?
佐藤さん:今の職に限ったことではありませんが、自分が苦労して課題解決のために取り組んだことが、後になって部隊のためになっていると実感できたときにやりがいを感じますね。リーダーとしては、教育訓練や指導を行った隊員や部隊が、困難を克服し、任務や訓練において素晴らしい行動をしたり、成果を収めた時に喜びを感じます。令和6年度能登半島地震発生時に災害派遣を行った際には、隊員一人ひとりが災害に遭われた方と真摯に向き合い、自らを犠牲にしつつ人として正しいことを実践しました。私自身、彼らの指揮官として感化されるところがありましたが、そうした経験もやりがいにつながっていると思います。

さらなる飛躍のためにMBAをめざす

――さまざまな分野で活躍してキャリア形成される中、なぜMBAを取得しようと思ったのでしょうか?
佐藤さん:以前、業務上の調整相手の大半が民間企業の方々という、自衛隊の中でも特殊なポストについたことがあります。そのポストは、50歳半ばで若年定年する隊員と、20歳代で任期で退職する隊員の就職援護を行う部署だったのですが、調整相手である民間企業の方々と対等に話をするためにはMBAを取得しておいたほうがいいのではないかと考えたことがきっかけで取得を決めました。また、自衛隊で培った思考力がどの程度通じるか試してみたいとも思ったんです。

SBI大学院大学に決めた理由は、自衛隊においても必要とされるリーダーに必要な倫理的価値観や人間力を養うための「人間学」に関する教育を重視していたからです。

今思うことは、自衛隊で培った、ものごとを俯瞰的に捉え、多角的、本質的、中長期的に考える論理的な思考力については企業経営の分野でも充分通用するのではないかということです。他方で、リーダーとしての人生観や国家観、それに哲学的な思考力や組織運営に関する幅広い実務的な知識については、まだまだ足りていないと思います。SBI大学院大学での学びは、これから研鑽しないといけないことについて認識する上でいい機会となりました。

入間基地で行われた有志による基地見学


――特に印象に残っている授業は何ですか?
佐藤さん:企業経営とは異なる分野に身を置いていますが、中国古典を基にした経営理論やリーダーシップ論、ヒューマン・リソース・マネジメント、組織行動学、プロジェクトマネジメント、組織論、経営戦略論など、人や組織を活かすための授業は、日々の職務で非常に役立っています。

特に印象に残っている授業は、北尾理事長による「中国古典から学ぶ経営理論」です。毎週提出するレポートは、指揮官としての経験から自信をもって提出しましたが、厳しいフィードバックをいただき非常にショックでした。その時に、心を入れ替え、本気で「人間学」を学びリーダーシップに活かそうと決意しました。修了して約5年、ようやく学びが血肉化してきたと感じるようになってきましたが、あの厳しいコメントがなければ今の私はなかったように思います。

修了式での佐藤網夫さん


――学外での活動、他の学生との交流など学生時代のエピソードを教えてください。
佐藤さん:私の在学中はコロナ感染症拡大防止のため、特に後半は他の学生との交流が制限されていました。しかし、限られた在学中の縁が、異業種研修や、人学の雑誌「致知」を活用した読書会などを通じていまだに広がっています。集う皆さんの志が「縁尋機妙(良い縁はさらに良い縁を呼ぶ)」になっているのではないかと思います。

今後の夢、次世代の人材に伝えたいこと

――今後の夢、やりたいことについて教えてください。
佐藤さん:中国や日本の古典を基礎とした東洋思想や人間学に関して、「博く学びて篤く志し、切に問いて近く思う(=広く学んで志を定め、疑問は機を失することなく教えを請い、現実の問題をじっくり考える)」を今後も実践し、その学びを業種を問わず、一人でも多くの将来を担うリーダーたちに伝えていければいいなと考えています。


――本学への入学をご検討中の方や新入生に向けてメッセージをお願いします。
佐藤さん:私のような公務員を含め、どのような業種の方であっても本大学院で得た学び、研鑽の習慣、人との縁は生涯の大きな財産になり、人生観も大きく変わります。 自分自身をもっと活かした人生を送りたい、部下や組織をもっと活性化させたい、世のため人のために尽くす仕事がしたいなど、熱い思いや志を持っている方、ぜひ本大学院の門を叩いてください。

PROFILE

佐藤網夫さん
佐藤 網夫  Amio Sato

  • 修了年月:2020年9月
  • 勤務先:防衛省 統合幕僚学校長 空将
  • 経歴:15歳で航空自衛隊の生徒隊に入隊。その後、防衛大学校に進学し電気工学を専攻。幹部に任官した後は、北海道、岩手県、青森県、奈良県などで部隊指揮官のほか、幕僚として人事、教育、情報通信など幅広い分野のポストに就任。2024年12月20日に防衛省 統合幕僚学校長に就任。