北尾理事長 祝辞 修了生の皆さまへ


北尾 吉孝

修了生のみなさんおめでとうございます。
書面により皆さんへの祝意をお届けします。

本大学院大学は働きながらも学べるよう、オンライン授業がメインの大学院大学です。その中でもこれまでは対面型授業や演習の成果報告会などを開催し、教員や学生の直接的な交流の機会も作ってきました。しかし新型コロナウイルス感染症対策の一環として、こうした対面型授業や演習の成果報告会のオンライン開催への切り替えを余儀なくされ、制約の多い中での学生生活に不自由な思いをされた方もいらっしゃったことでしょう。そうした環境においても学びを続けてこられた皆さん方の努力に心から敬意を表します。

今日話をしようと思うことは、これはいつも言うことですが、まず、皆さん方は今日修了式を迎えるにあたって、周りの方から様々な形で、「顕加と冥加」を受けていることに対して、感謝の気持ちを持つことを忘れないでほしいということです。顕加というのは、自分が直接的にお世話になった人に対する「ありがとうございます」という気持ちです。冥加というのは隠れている、見えないけれども色々な人にお世話になっていることに対する感謝の気持ちです。仕事と両立させながら修了するということは難しく、大変なことだろうと思います。しかし、それを支えるご家族などの支援に対して感謝をしていただきたいと思います。これが第一点目です。

第二点目に、修了すると今まで教えてもらった先生ともしばらくお別れになり、切磋琢磨してきた仲間ともお別れで、これから何を頼りにやっていったらいいかと考える人もいるかもしれません。
皆さん、まさにこれからが晴れ舞台です。本大学院大学で学んだことを大いに実践に移し、一燈照隅そして万燈照国で世の中を変えていってもらいたいと思います。しかし、多くの人がぶつかる壁だと思いますが、学んだことを実際に行動に移してみようとすると、実は学んだ通り、思った通りには行かないということが大半ではないかと思います。頭でわかっていても、いざ実践しようとすると実践できないのです。それはなぜか。『荘子』に車大工の「之を手に得て、心に応ず、口言う能わざるも、数有りて其の間に存す」という言葉があります。何事に寄らず、仕事のコツや事の勘所というものは人に教えることができないものの、一つの法則(数)がその間に存在しているのです。ですから、各人が「手に得て、心に応じる」で、この応心の自得こそが人間を育てるということです。皆さん方も様々なことを学びながら、一方で経験・実践していく、その中で自ら新たな気付きを得て物事に対する妙所をつかんでいくということが成長には必要なのです。妙所は直観力と言えるかもしれません。
私たちは努力して「知」と「行」を通じて学び続けていかねばならないということですね。

いずれにしましても、本大学院大学で一定の学を身に付けたからこれで終わりではないのです。学は死ぬまでやっていかないといけないことだと思います。その学というのは簡単に書物から専門的知識を身に付けるだけではなくて、皆さん方が学んだことを知行合一的に行動に移し、「世のため人のため」に自分が天から与えられた使命を果たす、そのための学位であるべきだと思います。

皆さん方が知恵と工夫と努力によって、様々な試練を乗り越え、これからも研鑚を重ねて、ぜひ立派な起業をする、あるいはリーダーになれるように人徳を磨いていただきたいと思います。

簡単ですが私の挨拶と代えさせていただきます。
ご修了、おめでとう。




2023年3月25日
SBI大学院大学
理事長 北尾 吉孝