学長祝辞 新入生の皆さまへ


SBI Graduate School

皆さん、本日はご入学おめでとうございます。


本来であれば、入学式で皆さんに直接祝辞を述べるところですが、ご承知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、人が密に集まって過ごすような空間を避けるよう、日本政府より要請が出ています。残念ですが今回は皆さんへの祝意を書面でお届けすることとしました。


私は、皆さんは非常に”いい選択をされた”と思います。
なぜそう思うかというと、まず、こういうユニークな大学院大学は世界広しと言え、ないと言うことです。すなわち「本学」、言い方変えれば「人間学」、そして「末学」言い方変えれば「時務学」。このふたつを教えている大学院大学はないです。さらに、文部科学省の認可を受け、修了するとMBAも取得できるということです。


ではなぜ、本学と時務学の両方を教える大学院大学を作りたいと思ったか、そして、何故そこに集う人にできれば起業をしてもらいたいと思ったかについてお話ししましょう。


まず、この国を良くしようとした場合に、我々ひとりひとりが人間として徳性を高めないと国は良くなりません。起業家は自分の創業した会社のリーダーとして、多くの人を雇用し、その人たちを人間として成長させるべく感化する。そういう当然の役割があるわけです。志念を共有化し、そして役職員たちを順次感化していき、一燈照隅そして万燈照国で世の中を変えていくのです。その根本にあるのが人間学です。


我々は昨今、虐待やいじめの問題など、聞くに堪えない心を痛める問題をニュースで耳にします。私は子どもたちが可哀想で、またそういうことが頻繁に起きていることに耐えられません。そこで心理的に病気になった虐待児を収容し、加療を行う施設を社会福祉法人として埼玉に作りました。また公益財団法人として、SBI子ども希望財団も作りました。これは皆、対象としているのは虐待された子どもたちです。こういう状況を、虐待された子ども達の為に変えていきたいという思いで活動を続けてきました。要は世の為人の為になる活動を行うということです。


大学院大学もある意味その一環であり、経営者を人間的に魅力のある人物として育て、そしてその人物を通じて世の中を変えていく、そういう思いで作りました。当然ながら経営者には専門的な知識(例えば法律や財務やあるいは特許といった、さまざまな知識)が必要ですが、それは起業する上で必要な知識であり、それらは時務学として勉強してもらうということで、大学院大学は徐々に社会からも認知される存在になりつつあります。


もうひとつ、私が皆さんにこれからお願いしたいことがあります。人物だけでは会社経営はうまくいきません。いくら徳のある社員を集めても、会社として時流に乗り、隆々と発展できるかどうかは別の話です。それには何が必要かと言うと、これも中国古典にすべて書いてある話ですが、「窮理」ということです。理を窮めるということです。

よく経営者の中には、サイエンティフィックなデータやサイエンティフィックな考え方を否定し、そんなものは青臭いという方がいます。 今はそこまでの時間がなくなってしまいましたが、私は50歳代前半ぐらいまではハーバード・ビジネス・レビューは必ず原文で読んでいました。そしてアメリカで評判になった本はすぐに取り寄せて原文で読んでいました。そうやって新しい知識や経営に活かせるものを探し求め、SBIグループを創設するにあたり、当時得た様々な知識がその中に活かされてきました。

例えば、当社グループは事業開始からすぐ、様々な分野の金融子会社を設立してまいりましたが、その目的は金融の「企業生態系」を築くことにあり、この「企業生態系」、「ビジネスエコシステム」というコンセプトも、実はハーバード・ビジネス・レビューからヒントを得たコンセプトです。


2010年ごろに新しいコンドラチェフの波が訪れました。コンドラチェフの波とは5、60年を周期に技術革新が経済循環に大きな役割を果たしていくことです。ちょうど2010年ごろからAI、ブロックチェーン、IoT、ビッグデータなどが出てきました。あるいはもうすぐ5Gの世界に入り、そして量子コンピュータの世界に入っていきます。こういった技術革新の流れがどんどん押し寄せてきます。我々はその技術を既存の金融業にどんどん取り入れていく。そういうことをやって今日隆々と発展し続けているわけであります。したがって片一方で自分の人物を磨くと共に、片一方でそういった窮理、理を窮める。これをやって事業を繁栄させないと、社会に対するインパクトは小さいままです。

皆さん方には、人物を磨き多くの人を感化し、そして良き社会に導くと共に新しい技術を用いて革新を巻き起こし、そして世の中をより良いものにしていく。これをぜひトライしていただきたいと思います。そして、それを学ぶ上で私は皆さんに“いい選択をした”と言いましたが、ここの大学院大学ほど、そういったことに力点を置いているところはありません。私は自信を持って言えます。


「窮理」、これはほかの言い方では「居敬窮理」という朱子学の言葉です。あるいは「開物成務」という言葉があります。様々なことの知を深め、そして新しい世界を切り拓き、事業を成功裏に成就する。これは実は易経にある言葉で、このように、何千年も前から何も変わっていないということです。皆さんは大学院大学で中国古典を守屋先生から学ばれることがあると思いますが、そこに新しいものが常にあります。そんなものは勉強してもしょうがない、と思っていたら大きな間違いです。人類の正に宝とすべきものは、こういった古典に残された叡智であります。皆さん、この叡智を深く理解し深く学び、そして知行合一、自分の身に付けたものは行動に現し、そして具現化していくこのプロセスをしっかりとやっていただきたいと思います。それは入学した日から、新しいことを学んだらすぐに行動に移していく、その気持ちを持たなければいけませんよ、ということであります。


以上、私から申し上げたいことはこれまでです。


おめでとうございました。


2020年3月28日
SBI大学院大学
学長 北尾 吉孝