野間先生金融ブログ

日銀の総資産(B/S)が500兆円の大台を突破

日銀
 日銀が6月2日に発表した「営業毎旬報告」によると、5月末時点の日銀の総資産残高は500.8兆円であった。拡大を続けてきた日銀のバランスシート(B/S)の規模がついに500兆円の大台に達したことになる。昨年の5月末は425.7兆円だったので、この1年だけでも75.1兆円の増加である。日銀の資産の急増は、日銀が量的緩和の一環として国債の大量購入を続けてきたためであり、総資産500.8兆円の内訳を見ると、国債だけで427.2兆円と、資産全体の85.3%も占めている。ただ日銀は、昨年9月に金融緩和策の軸足を「量」から「金利」に転換したこともあり、国債保有残高の年間増加額を80兆円程度とする買い入れペースは、足もとでは鈍っている。それでも、「物価上昇率2%程度」の達成まで大量の国債を買い続ける枠組みは維持していることから、今後も資産の膨張が続く、と見込まれる。
 日銀による国債保有高と日銀の資産残高(B/S)は、黒田総裁が就任後の2013年4月に「異次元の金融緩和」を開始して以降、その伸びが加速し始めた。2013年4月末時点では日銀の国債保有高は134.1兆円だったので、この4年余りの間に3.2倍に急増したことになる。また、日銀の資産残高も、2.9倍もの急増ぶりである。
 この500兆円の大台超えであるが、基本的にグッドニュースなのか、それともバッドニュースか。答えは無論、後者である。日銀の資産残高(B/S)の膨張は、金融緩和の縮小を意味する「出口戦略」の実施の際に、日銀の財務を傷める懸念を大きくする。出口の過程で長期金利が上昇(国債価格が下落)すると、日銀が大量に保有する国債の時価が減少してしまうからである。また、日銀が購入してきた国債は利回りが低いため、金融機関が日銀に保有する当座預金への利払い費が国債保有の利回り収入を上回ってしまう「逆ざや」も懸念される。
 また、わが国の近年を振り返って見ても、バブル崩壊後にいわゆる「B/Sリセッション」に見舞われたわが国では、企業も銀行もB/Sの縮小(「債務」、「雇用」、「設備」のリストラ)に勤めてきたのが実情である。そうした中で、この数年間における日銀のB/Sの急拡大は異常であるように見える。
 先進国の中央銀行との比較でも、日銀のB/Sの拡大は際立っている。金融危機以降、日銀を含む先進各国の中銀は量的緩和策とB/Sの拡大を余儀なくされてきた。中銀のB/Sの規模は、名目GDPとの比較で語るのが通例であるが、日銀の場合、足元ではB/SがGDPの93%と、GDPにほぼ並ぶ規模に膨張している。その一方で、米連邦準備委員会(FRB)は23%、欧州中央銀行(ECB)は28%程度に止まっている。換言すると、日銀による市場への資金供給の規模、すなわち金融緩和の度合いがFRB等と比べて極めて強いことを示している。
 出口戦略に関しては、「時期尚早」を繰り返している日銀である。しかしながら、「500兆円超え」を契機に、日銀に対しては、膨らみ過ぎたB/Sの手じまい圧力が大きくなることは間違いないだろう。資産が膨らみ過ぎたことで金融緩和の手じまいが難しくなる、との懸念も大きくなろう。日銀には大きな説明責任が求められている、と言えのではないか。
野間修

【略歴】 
神戸大学法学部卒業。財務省(旧・大蔵省)に入省し、主に国際金融局にて、税・財政、金融検査官、米国経済、国際通貨基金(IMF)や国際収支、ODAなど、幅広い分野の実務に従事。シンガポール国立大学にて2年間の客員研究員も。財務省退職後は宮崎公立大学地域研究センター主任研究員に就任し、地域経済の研究に従事。地元ラジオ経済番組への定期出演や市民向けの金融セミナーの講師役も。
2017年3月、惜しまれながらSBI大学院大学を退官。大学創立メンバーの一人で、在任時は「国際金融論」「金融概論」を担当し、最新の講義データと優しい物腰で多くのファンを持つ。
大学1年の時、武道館コンサートに行き、リバプールに三回訪問するなど、長年のビートルズマニア。
野間先生