組織を動かすには、理論プラス人間力 人間力の重要性とその高め方

ロジカルで数字に強い、いわゆる「頭のいい人」は、エリート街道を駆け足で突き進む人の典型的なイメージでしょう。従来のMBAのカリキュラムにおいても、ロジカルシンキングに代表される左脳的な能力を高めることに重点が置かれてきた側面があります。

しかし、あるキャリア追跡調査によると、頭の良さは、必ずしもキャリア上の成功を約束する要素ではないことが分かっています。では組織の中で成功するためには、ロジック以外に何が求められているのでしょうか。

人間力の重要性とその高め方

ハーバード大学卒業者の追跡調査から分かったこと


頭のいい人の代表例ともいえるのが、優秀な人がひしめく一流大学においてトップの成績を収めるような人でしょう。このような人は社会に出てからも、さぞかし輝かしい成功を収めるのではないかと思われるかも知れません。

ハーバード大学のジョージ・ヴァイラント博士は、1940年代にハーバード大学を卒業した人々を対象とし、大学卒業後のそれぞれのキャリアを追跡調査しました。この調査では、卒業後20~30年経過し、ミドル世代になった対象者たちの年収、生産性、業界内の地位といった項目を比較しています。その結果分かったことは、ハーバード大学において高い成績を獲得した者が、必ずしも社会的成功を収めているわけではない、ということでした。また知能指数を測るIQテストの結果と、社会的成功の関係も盛んに研究されています。しかし多くの研究結果において、高いIQスコアを獲得した人が、必ずしも社会において成功するとは限らないことが報告されています。 では頭の良さが社会的成功にそれほど大きく貢献しないのであれば、何が寄与するのでしょうか。

組織を動かせる人は、ロジックに加えて人間的魅力を持った人

組織を動かせる人は、ロジックに加えて人間的魅力を持った人

社会的成功に寄与する要素として、多くの心理学者が注目しているのが、感情の扱い方といったことも含めた、よりパーソナルで人間的な魅力です。このように書くと、「第一線で活躍するビジネスパーソンはビジネスの現場において、感情のような曖昧な要素はできるだけ排除するべきなのでは」と思われるかも知れません。

もちろん組織の中で活躍するためには、ロジックは欠かせません。しかし組織の活動とは、すなわち人の営みであり、組織内で仕事をするうえでは人との触れ合いを避けることはできません。人はロジカルでもあり、かつ感情の生き物ですから、人との協働の中で成功するためには人間的魅力を兼ね備えた「人を動かすことができる人」である必要があります。組織を動かすためには、ロジックに加えて人間的魅力も持ち合わせる必要があるのです。

人間的魅力を高めるための2つの方法

| その1:先哲に学び、人としての軸をつくる

その1:先哲に学び、人としての軸をつくる

人間的な魅力を高めるためのもうひとつの方法として、人としての軸をつくることが挙げられます。ビジネスの現場においては、絶対的な解というものは存在しません。しかし答えがないからといって、日和見的な行動に走ってしまっては、事業の成功は遠のくばかりでしょう。答えがないなかでも、自分がどんな価値観に基づいて判断し、行動していくのかという「軸」が重要になります。このような、人としての軸を持つためのひとつの方法として、偉大な先人たちの思想に親しむことが有効でしょう。

本学学長の北尾は、事業を成功させるためのポイントのひとつとして、論語の「徳不孤必有隣」(徳は孤ならず 必ず隣有り)の重要性を説いています。「徳不孤必有隣」とは、徳のある人は孤立することはなく、必ずよき隣人が集まってくる、という意味です。どのような種類のビジネスにせよ、事業は一人では成功させることはできず、志念を共有しベクトルを合わせた仲間を持つことが欠かせません。そのような仲間を持つためには、修練を怠らず、徳を積み重ねていく必要があります。特に事業が苦しい時などは、目先の利益が魅力的に映ることもあるかも知れませんが、意思決定を行う際に「果たしてこの行動は徳があると言えるのか?」と自分に問いかける姿勢が、真に成功する上での重要なポイントとなるでしょう。

このように、先人たちの思想を学ぶことで人間力を高め、人としての軸を確立することは、ビジネスの様々な場面において効果を発揮します。本学のMBAという「経営学」の課程において、中国古典のような思想の授業を取り扱うのは、このためなのです。

| その2:「こころの知能指数」の強化

前述の通り、社会的成功に貢献するIQ以外の要素として注目されているのが、感情をどれくらい上手く扱えるか、つまり「EQ=こころの知能指数」が高いかどうか、という点です。

EQには5つの要素があるとされていますが(後述)、そのなかでも特に重要な「自身の感情を知ること」の能力を高める方法として、日記をつけることによる内省が効果的とされています。一日の終わりに、どのような出来事に対してどのような感情が起こったのかということを日記という形で振り返ることで、自身の感情への感度を高めることができます。自分の感情を知ることができれば、感情のコントロールや自分自身のモチベーションアップも行いやすくなりますし、また対人関係を上手く扱うことにもつながっていきます。 。

【参考】EQの概念を考案したエール大学のピーター・サロヴェイとニューハンプシャー大学のジョン・メイヤーは、EQの能力として具体的に下記の5つを提唱しています。

     
  •  自分の感情を正確に知る
  •  
  •  自分の感情をコントロールできる
  •  
  •  楽観的にものごとを考える、もしくは自己を動機づける
  •  
  •  相手の感情を知る
  •  
  •  社交能力、対人関係能力

以上、キャリアの成功において感情の扱い方や、人としての軸といった人間的な魅力の重要性、その磨き方についてご紹介してきました。これからのキャリア開発の一助になりましたら幸いです。


(参考情報)

― Daniel Goleman著 Emotional Intelligence: Why It Can Matter More Than IQ
― 学校では教えてくれない「こころの知能指数:EQ」を育む5つの要素|ライフハッカー