教員ブログ

AIとロボットは、私たちの職を奪うのか?

AI

経営管理研究科講師 吉田宣也





AIやロボットによって、今ある仕事がどんどんなくなっていく、という論調の話が最近急に増えていますね。

・それはどういうことか?
・それは本当に起こるのか?
・ではどうしたらいいのか?

このことについては、歴史に学ぶところが実に大きいと思います。

まずはじめに、このグラフを見てください。(クリックすると拡大します)

挿入図

これは、アメリカの統計なんですが、全ての職業を、ある基準で2種類に分類し、その就労人口比率の推移を示したものです。

明確にかつドラスティックに、その比率が逆転してきているのがわかりますね。

では、一体どんな基準で世の中の職業を2分類したのでしょうか?

よくある回答としては次のようなものです。

「知的労働 vs 肉体労働でしょ?」
「第一次+第二次産業 vs それ以降でしょ?」

実はこのグラフ、どちらでもなくて、2分類の基準は、「定型的な業務か、vs そうでないか」なんだそうです。(routine vs non-routine)

へえ、そんな基準で職業を分けると、時代の大きな変化が見えるんだ、と私は少し不思議な気がしました。

先ほど「歴史に学ぶところが大きい」と書いたので、話を過去の変革に戻します。

19世紀の産業革命のときに、機械化が進むと自分たちの仕事が減ってしまうと考えた労働者たちは、「機械は庶民の敵。みんな壊してしまえ!」という運動を起こしたんですね。

そのような「機械打ちこわし運動」はすぐに鎮静化しましたが、労働者の職が機械に奪われるという危機感が長くくすぶったのは事実ですし、実際に失われたのでした。

でもここで重要なのは、職が減った、ということではなく、機械の普及が、人々の働き方に大変化をもたらした、ということなんです。また、職業人口にも影響を与えたという点です。そしてそれは、産業革命でも情報革命でも同じです。

具体的には、産業革命では、土木や農作業の一部が機械に取って代わりました。が、そこで失われた職以上に、人々の暮らしが豊かになり、さまざまな新しい産業が、よって職業が、生まれたのです。

19世紀の「機械打ちこわし運動」と同じことを昨今の「情報革命」にあてはめると、たとえばありとあらゆるコンピュータを壊してしまえ! ということになってしまいます。もちろん実際には今日、そういった打ちこわし運動は起きていませんが。

いずれにしても、いま来ようとしている新たな変革を「AI・ロボット革命」と呼ぶならば、それに対応するために、過去の「産業革命」と「情報革命」で職業の世界が、人々の働き方がどう変わったかをみるのは良いことです。そこでは何が起きるかを、歴史に学んだ知見を用いて考えてみると、次のようになるかと思います。

産業革命でも情報革命でも、人の仕事が機械に奪われる、という現象は起きました。紡績機も蒸気機関も機械、コンピュータもスマホも機械、そしてAIもロボットも、本質は人工物つまり機械なので、今回も、「機械が人間の仕事を奪う」と予想できます。

と書くと、最初に感じることは、「やっぱりそうか、また人間が職を追われる第三の波がきたか」となるかも知れませんが、それでは片手落ちの認識です。

過去の技術革新において起きたことの本質は、人々の職が減ったことではなくて、むしろ新たな働き方や社会との関わり方が生まれ、それによって働き方、ひいては働く意味をもが変化した、ということにあると思います。

蒸気機関が生まれたことにより、「飛脚」や「人足」などの職業がなくなる代わりに、運転手という職業が生まれ(*そしてその職はまもなく自動運転によって減っていき)、農作業が、手作業から耕運機の操作に変わり、それぞれ生産性が何桁かアップしました。またIT革命においては、「改札のおじさん」はいなくなり、104で電話番号を調べる人はいなくなり、という現象は山ほど起きていますが、それ以上のペースで、もはや例をあげるまでもなく、新しい製品やサービスがどんどん生まれ、それに伴って新しい職業が生まれているわけです。

それを見据えたうえで、では私たちは「AI・ロボット革命」の時代、どのような仕事をしたら良いのか、をぜひ考えましょう。

その際、冒頭にあげたグラフを見返して、(AIでなく)私たちだからできること、を考えてみてください。